トップ>創作SSトップ>未来の指定席 |
未来の指定席 |
[1] おれがいつものようにパステル達の部屋の扉を開けると ベッドに腰掛けているパステルの膝の上で ルーミィが耳かきをしてもらっていた。 しかも、気持ちよくなったのか既にすっかり熟睡中らしい。 ふーーーーーーん。 耳かきか……。 「どうしたの?」 おれが来たのを機に終わりにしたのか、 寝ているルーミィを膝からはずし、横に寝かせる。 「いや、昼寝しにきたんだけど……おれもそれしてもらおうかな」 ちょっとの期待がなかった訳じゃないが、ま、どっちかってーと いつものからかい半分で言ってみた。 当然、あいつは 「はあ? いっつも自分でしてるじゃない」 ときたが、 「だぁらさ、自分ですると取り残しとかあるかもしんねーじゃん。 ルーミィで鍛えたその腕の見せどころだろ?」 と、とってつけた理由でちょっとねばってみたところ、なんと意外にもOKが出てしまった。 「……ふーん、わかった。ま、実はわたし、人の耳かきするの大好きなんだよね! いいよ! やったげる!」 人の耳かきするのが好き?! おれには理解不能な感覚でついていけねえが、ともかく何やら おれにとって嬉しい展開になっていることは間違いない。 ここは素直にのっておくか。 「んじゃ……」 と近づいた時、ふいに気づいた。 ど う い う 姿 勢 で し て も ら え ば い い ん だ ?! しかし、パステルは何の疑問も持たずに両手を軽く上にあげ スペースを作っている。 尚も固まっていると何にも考えてなさそうな笑顔で 「あ、左側だとルーミィにぶつかっちゃうかもしれないから、 右側に座ってこっちに倒れて」 とご丁寧にアドバイスをくれた。 ……そうだよな。本人がいいって言ってんだもんな。 というか、そういうことを全然意識してないんだよな、こいつは。 そうだ、そうだ。おれも何も考えるな、何も……。 邪念を打ち払うようにしてあいつの右側に座り、横になる……、その、膝の上に。 ……。 ……無理! 消えやしねえよ、邪念なんてよ!! やっぱやめよう、こんなこと。 そう思ったおれが 「ごめん。やっぱ……」 と言って頭を持ち上げた途端、すごい勢いで下に押された。 「なっにしてんの、トラップ! 危ないじゃないっ!! もうっ。後ちょっとで耳かきの棒が刺さっちゃうとこだったよ!」 有無を言わせぬ勢いで耳の上の方を左手でひっぱられ、その甲で頭を固定されてしまった。 万事休す。 次へ |